序幕 憎悪の始まり

 真っ暗闇の中、微かに声が聞こえてくる。


『絶対にここから出てきては駄目よ、バンユウ』

『声を出さずに静かにしていなさい』



 閉ざされた扉の向こうから、誰かの悲鳴が飛んできた。
 ごうごうと燃え盛る音と、むせ返るような血の匂いで吐きそうになる。


「(とうさん、かあさん……!!!)」

序章挿絵


 モンスターの奇声とともに、扉がこじ開けられ、眩しい光が漏れてくる。
 もう駄目だ、ここで死ぬんだ。少年は絶望の淵に落とされた。
 猛烈な恐怖により薄れゆく意識の中、少年は視界の端に青く輝く閃光を見た。
 自分に襲い掛かろうとしていたモンスターたちがバタバタと倒れこむ。
 助かったのか――頭の片隅でそう思った瞬間、彼の意識は完全に途切れた。


著者:狩生
全ての始まり。